肩書き“自分”。自傷行為がやめられなかった過去から、自分が好きだと言えるようになるまで。高橋妙子さんインタビュー

オハナ

働く

インタビュー

2021年11月ごろに書かせていただいたNAMARA代表江口さんの取材記事。

新潟では知らない人はいないくらい有名な方への取材ということで大緊張の中挑みましたが、結果的に多くの方々に読んでいただけて反響も多数いただき、セナポンにとって大きな財産になりました。そして、この記事を読んで「ぜひセナポンに取材してほしい!」と声をかけて下さった方がいます。

それがこちらの高橋妙子さん

高橋妙子 Taeko Takahashi

1974年新潟市生まれ。20歳ごろから自傷行為や薬品の過剰摂取を繰り返し、精神病院の閉鎖病棟に入院を複数回繰り返す。同時期には「自傷行為自慢」としてこわれ者の祭典の初代メンバーとしても活動。その後結婚・出産を機に症状が快方に向かう。現在は燕市で会社員として勤務しながら、15歳の娘を子育て中。

江口さんの記事が更新されて1週間も経たないうちに、セナポンのお問い合わせフォームから「起業家や著名人でもないけれど、何者でもない私だからこそ伝えられることがあると信じています!」と、熱いメッセージを送って下さいました。

ということで今回はこちらの高橋さんに、ご自身の過去や様々な経験から学んだことなどについて、たっぷりとお話を伺っていきたいと思います。

オハナ
オハナ

この度はご連絡いただきありがとうございました!高橋さんの熱意あるメッセージを読んで、お会いできるのをとても楽しみにしていました。今日はよろしくお願いします!

高橋さん
高橋さん

自分から取材を申し込んでおきながらすごく緊張しているんですが、笑
色々とお話出来ればと思っています。こちらこそよろしくお願いします!

今回の取材はセナポンの運営会社 株式会社ウィザップにて行いました

自傷行為に苦しんだ20代

オハナ
オハナ

まず初めに、高橋さんの過去についてお聞かせ下さい。
具体的にはどのような症状で苦しんでらしたんですか?

高橋さん
高橋さん

基本的には自傷行為薬品の過剰摂取ですね。OD(オーバードーズ:薬品の大量摂取のこと)をして何回か救急車で運ばれ、精神病院の閉鎖病棟にも数回入院しました。

オハナ
オハナ

失礼だったら申し訳ないんですが、そのような行為に至った背景はどのようなものだったのでしょう……。

高橋さん
高橋さん

一番最初に自傷行為をしたのは20歳くらいだったかな。そのくらいの子が抱えているなんでもないストレスが理由だったと思います。なんとなく手首を切っていたんですね。

オハナ
オハナ

なるほど……。

高橋さん
高橋さん

家庭環境も悪くなくむしろものすごく大事にされて育ってきましたし、母親のことも大好きなのに、 元々の自分の気質的に自己肯定感が育ちにくく、感情のコントロールがうまく出来なかったんですよね。怒り・苦しみを感じたときに、どうやって対応したらいいか分からなかった。

オハナ
オハナ

そうなんですね。またまた失礼なことを言うようで申し訳ないんですけど、やっぱり自傷行為とかの背景には家庭環境が関係しているのかな~なんて思っていたので意外でした。

高橋さん
高橋さん

そうですよね!?
どうしてこうなってしまったのか、私自身も何十年も不思議に思ってるんです。笑

オハナ
オハナ

じゃあ、自分を責めてしまうとか、悩みを抱え込んでしまうとかの気質が高橋さんの生まれもったものとしてあっただけかもしれないですね。

高橋さん
高橋さん

きっとそうなんですかね。
あと、逃げる手段を知らなかったというのもあると思います。
昔はストレスがあっても、学校や仕事に行かないという選択肢を持てなかった。そういうものは真面目に行くものだと思い込んでいました。

オハナ
オハナ

そうなんですね。真面目で責任感を感じやすい性格なのでしょうか。

高橋さん
高橋さん

そうですね。それが私の良いところでもあり悪いところでもあるんですが……。
なので、不安や死にたいという気持ちも1人で抱え込んで、吐き出す場所がありませんでした。お母さんのこと大好きでしたけど、これだけは言えなかったですね。

「自傷行為は『私はこれだけ苦しいんだよ。』っていう気持ちをお母さんに見せたかったというのもありました。」という高橋さん。血だらけになった腕を見たお母さんから「あなたの腕を切るくらいなら、私の腕を切りなさい!」と言われたこともあったと言います。

NAMARA江口さん主催・こわれ者の祭典への出演

オハナ
オハナ

高橋さんが苦しみの中にいる真っ最中、NAMARA江口さん主催のこわれ者の祭典にも出演されていたんですよね。ここにはどういう経緯で参加されたんですか?

▼さまざまな病気や障害を持ち生きづらさを経験した人たちが、詩の朗読やパフォーマンスをしたり、病気の苦しみや乗り越え方などをユーモアを交えて伝える「こわれ者の祭典」(このポスターは2020年のもの)

高橋さん
高橋さん

実は私、苦しい時期の真っただ中に「同じようなことで苦しむ友達が欲しい!」と思ってHPを作成して、そこに当時思っていた感情をブログのような形で吐き出したり、掲示板を作って同じような人とコミュニケーションを取ったりしていたんです。

高橋さん
高橋さん

そこで出来た友達2.30人を集めて、今で言う「オフ会」のようなものを新潟で開催していたんですね。そうしたら新潟日報さんが取材して下さって「鬱だけど笑ってます」的なタイトルの記事が新聞に掲載されたんです。

オハナ
オハナ

え~!めちゃくちゃすごい!!

高橋さん
高橋さん

ありがとうございます。笑
そしてこの新潟日報の記事がきっかけで初期の頃のこわれ者の祭典に出演するようになり、2年程活動させてもらっていました。

オハナ
オハナ

そんな経緯があったんだ!
すごい、高橋さん昔から発信をしてらっしゃったんですね。

高橋さん
高橋さん

発信と言えるようなものでもないですけどね。笑
ただ、自分と同じような友達が欲しい苦しみを共有できる場が欲しいとは強く思っていました。

オハナ
オハナ

なるほど~。
その後こわれ者の祭典に出演されることになりますが、高橋さん自身、自分の弱さを公にすることや、それを笑いに変えるってことに抵抗感はありませんでしたか?

高橋さん
高橋さん

全然なかったです。見られて恥ずかしいとも思っていなかったですし、このような企画は画期的だと思っていました。
自傷行為をしてても、アルコール依存症でも、不登校でも、どういう自分でも生きてていいんだってことを教えてくれた宝物のような場所でしたね。

高橋さん
高橋さん

こわれ者の祭典のメンバーたちには心から感謝しています。2021年12月に開催されたエンタメミックスの中のこわれ者の祭典も見させていただいたんですが、長い年月を経てまた再会出来たことが本当に嬉しかったです。

快方に向かおうとする行動はとても素晴らしいことだけど、いつ治るか分からない、もしかしたら一生付き合っていくかもしれない病気や障害。それを治すことだけが善と考えてしまったら、今の自分でいることがどんどん嫌になっていき、思考も下に下がっていく。そうすると更に自分を傷つけてしまったり、最悪の場合自死を選んでしまう場合だってあるかもしれない。

そう思うと、当事者の方々にとって一番大切なのは「今の自分を肯定できること」なんじゃないかなあと思います。症状だって無理に直さなくてもいいと思えると、心もスッと軽くなりますよね。

結婚・出産を機に症状が快方へ向かう

オハナ
オハナ

高橋さんの場合、自傷行為などの症状は結婚・出産を機に快方に向かわれたんですよね。

高橋さん
高橋さん

そうですね。向かわざるを得なかった感じですけど。笑
子どもを妊娠したと精神科の先生に伝えたら、「えーっ!」って言われましたもん。
全然完璧じゃない自分が子育てなんて出来るのかって恐怖でしかなかったです。

高橋さん
高橋さん

キラキラした育児雑誌を見て、「私は絶対こんなママになれない……。むしろ虐待してしまいそうな自分がいるのに、辛くて読めないよ!」って思ったりもしていました。

オハナ
オハナ

失礼なことを言うようで大変申し訳ないのですが、産まないという選択肢はなかったんでしょうか。

高橋さん
高橋さん

うん、それは不思議となかったですね。産まなきゃいけないとは思っていました。自分の中で、どこか「この子を産んだら自分が変わるかもしれない。」っていう気持ちがあったのかもしれません。

オハナ
オハナ

なるほど……。
そこからお子さんを育てる中で、どのように快方に向かっていったんでしょうか。

高橋さん
高橋さん

昔の自分に戻りたくないという一心と、この子は私が育てなきゃいけないという責任感を持って動いていたら、いつのまにか。その間はすごく苦しかったですけど、再発は無かったですね。

オハナ
オハナ

そうなんですね。やっぱり昔は辛い出来事が多かったのでしょうか。

高橋さん
高橋さん

うーん、難しいんですがそうとも言い切れなくて……。自傷行為で苦しんでいたときも、楽しいことはいっぱいあったんですよ。それこそオフ会や、仕事で良くしてくださった方々との付き合い、当時の仲間達と泣いたり笑ったりしたのも楽しかった~。
そして面白いことに、回復して普通の世界に戻ってきて、逆に昔以上の生きづらさを感じるときもあります。仕事、家族、人間関係で悩んだりすることもたくさん。

オハナ
オハナ

うんうん、どちらの世界にも生きづらさってありますよね。

高橋さん
高橋さん

そう。でも私が昔に戻りたくないと思うのは、今の世界の楽しさが分かったから
そして私が経験したマイナスな出来事も発信すれば共感者を生んだり、それで救われる人がいたりする。マイナスな出来事をプラスに変えることが出来るって気づけたからなんです。

高橋さん
高橋さん

私、マイナスな出来事をプラスに変えるのが大好きで、それがすごく楽しい。だから、「こんな不完全な自分でもこの世界で生きていていいじゃない」って思えるようになりました。

高橋さんは「病院の保護室で手首を縛られて今にも死にそうだったあの頃と、今こうやってちゃんと働いて子育てして、取材まで受けることが出来るようになった自分、二つの世界を経験した自分がすごく好きです。」と語ります。

自分のことを肯定できず自傷行為を繰り返していた高橋さんが、今の自分を好きだと言えるまでに至った背景には、きっと相当の努力があったのでしょう。

自分で育てるしかなかった「自己肯定感」

オハナ
オハナ

お話聞く限り、昔の高橋さんは自分のことなんて決して好きではなかったのかなと思います。しかし、今は「自分が好き」と胸を張って言えていますよね。その自己肯定感ってどのように育んだのでしょうか?

高橋さん
高橋さん

思いつくものだと、まずは「行動すること」です。自分がやりたいなって思ったことに対して正直に、正しいより楽しい方に進んじゃおうって思っていました。
行動することは多分、昔から得意なんです。人にどう思われようと関係ないってマインドでね。まあそれが一番難しいって人もいるかと思うんですけど……。

オハナ
オハナ

そうですね。でもそれが自分を好きになる一番の近道だと思います。
それこそ、今回セナポンに取材の依頼を下さったのもすごい行動力ですよね。感動しました。

高橋さん
高橋さん

ありがとうございます。笑
あとは、自分が出来ること・やらなければいけないことを日々積み重ねていったことや、自分の気持ちを発信することで生まれた人との繋がりも大きかったですね。

私の場合でいうと、子育て、仕事、ボランティア活動かな。
やりたい!と直感で思ったことを躊躇せず行動に移して、例え失敗しても、どんな自分でも受け入れて許すことを心がけてました。

高橋さん
高橋さん

また、私自身もそうだったんですけど、自分のことを傷つけてしまったり、マイナスのパワーが強い人って、それに比例してプラスのパワーも相当強いと思うんです。
だから、「私はマイナスのパワーが強い分、出来ることもいっぱいあるんだ~!」って自分に自己暗示してましたね。

「でもどん底に落ちているときなんて、こんなことを考えることも出来ないですよね……。」と高橋さん。

しかし、高橋さんが二つの世界を生きてきてわかったことは、どちらの世界にも必ず希望があるということ。辛い時に逃げることすら出来ないのならば、他の方法を一緒に考えてくれる人は必ずいるから、どうか生きてくださいと、力強く語って下さいました。

思春期の娘を持つ母親として

オハナ
オハナ

今現在は15歳の娘さんの子育て真っ最中なんですよね。
(実は今日、この取材にも娘さんが同席されていました。)

高橋さん
高橋さん

そうです。思春期真っただ中の娘がいます。笑

オハナ
オハナ

今は中高生もみんなスマホなどを持っていたりして、抱える問題もどんどん複雑に、難しくなってきていると思います。
そんな中、高橋さんが娘さんに接する上で心がけていることはありますか?

高橋さん
高橋さん

うーん、私も子育て真っ最中なので、あんまり偉そうなことは言えないですけど、友達のように何でも話してもらうってことは意識していますかね。
私自身も自分が昔自傷行為をしていたこととか娘に話していますし。「ママも自分の苦しいこと全部言うし、嘘はつかないよ。」とは日頃から伝えるようにしています。

オハナ
オハナ

なるほど~そうなんですね。
実は私も、親には自分の悩みを言いづらいタイプだったんです。長女だったもので、自分がしっかりしないとなっていうのがあって。

高橋さん
高橋さん

分かる!私も長女。おんなじです。

オハナ
オハナ

あ、そうでしたか!笑
でも今お話を聞いていて、高橋さんみたいにお母さんの方から自分の弱さをさらけ出してくれると自分の悩みも話しやすいなと思いました。

高橋さん
高橋さん

うんうん、なるほどね。
お母さんって「お母さん」という生き物で、お母さんになる以前のことなんてわからないですもんね。

オハナ
オハナ

そうなんです。親子関係に限らず誰かとコミュニケーション取るときって、やっぱり相手も自己開示してくれないと自分のことを話す気にはなれない気がします。

高橋さん
高橋さん

そうですよね。お母さんも一人の人間で、苦しむこともあるんだっていうことを伝えるということは、子どもが思春期に入ってから特に意識しているかもしれないですね。

オハナ
オハナ

でもきっと、それを子どもに中々見せられなくて苦しんでいる人も多いですよね。

高橋さん
高橋さん

私も出来ることなら見せたくないんですけどね。笑
でも自分より偉いと感じる人には尻込みしちゃいますよね。親と子だし完全に対等な立場にはなれないかもしれないけど、なるべくそれに近づくように努力するようにしています。

オハナ
オハナ

ほお~勉強になりました!
思春期のお子さんとの関係に悩まれてる親御さんにとってもすごくヒントになる言葉だと思います。

高橋さん
高橋さん

ふふ、少しでも参考になれば嬉しいです。私もまだまだ子育て勉強中。ママさんたち、一緒に頑張っていきましょう!!

何者でもないけど、唯一無二の存在である私

オハナ
オハナ

ここまで長々とありがとうございました。最後に何かお伝えしたいことはありますか?

高橋さん
高橋さん

この取材で私が伝えたいことってなんなんだろうってずーっと考えていたんですが、取材していただく中でこれだ!というものが分かりました。
私の肩書きは「自分」。そして誰もが肩書き「自分」。枠組みを決めないでどんなことにも挑戦していいし、何かになれなくても悲観する必要はない。

高橋さん
高橋さん

むしろ、何者にもなれない人は世界でたった一人の大切な唯一無二の存在になれると信じています。
時には失敗したり辛いことも経験するかもしれないけど、どうか生きて、自分がやりたいことに正直に、あなただけの人生を歩んでいってほしいです。

オハナ
オハナ

素晴らしい……!この言葉は昔の高橋さんだったら言えなかったことですよね。

高橋さん
高橋さん

本当にそうです! 自己肯定感が低く何者にもなれないと思い悩んでいた私が、色々行動してたどり着いた結論がここです。笑
今回の取材だってそう。どこかの企業の社長さんやお店の経営者じゃなくても、セナポンに取材してほしい!と思ったら声を上げてもいいじゃないのってね。

オハナ
オハナ

はい、そういう方も大歓迎です!笑

高橋さん
高橋さん

何の肩書きもない普通の主婦が自分のやりたいことに正直に、チャレンジをしている様子を見て、勇気づけられる人がいたら嬉しいなと思います。今日は本当にありがとうございました!

オハナ
オハナ

こちらこそ、ありがとうございました!

まとめ

という訳で今回は燕市在住の会社員・高橋妙子さんにお話を伺いました。

誰もが「肩書き自分」という言葉には私自身すごくハッとして元気と勇気をいただきましたし、自分のやりたいこと正直に行動すること、そしてそれを発信することはセナポンとしても大事にしないといけないなと改めて実感いたしました。

また、何かに属していなくても伝えたいメッセージを持っていて、私達にとってそれが共感出来るものであれば、その人の背中を全力で押させていただきたい、そういうメディアになりたいと思えるきっかけにもなりました。個人の方でも取材依頼どしどし募集中です!

セナポンにとっても1歩道が開けたような取材になりました。高橋さん、お忙しい中お話を聞かせて下さり誠にありがとうございました~!

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