子どもと地域社会を繋げて、明るい未来づくりを。NPO法人みらいずworks角野仁美さんインタビュー

オハナ

働く

インタビュー

2012年に設立され、今年で10周年になるNPO法人みらいずworks

自分から自分らしく みんなとともに、社会をつくる人を育てる」を活動理念とし、未来に希望が持てない子ども・若者に対して、
・身近な家族や友達との人間関係を深める
・地域や社会と関わる機会をつくる
などのアプローチをすることで、ひとりでも多くの子どもたちが社会参画意識を持ち、自分らしく主体的に生きることができる社会を実現するために、日々教育活動を行っています。

といっても、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。また、私たちと現代の子どもたちでは、受けている教育が全く変わっていると言います。それは一体どういうことなのか、今回は理事である角野仁美さんにお話を伺ってきました。

角野 仁美 Hitomi Kakuno

1994年岐阜県生まれ。高校時代に自らの志を確立するキャリア教育の機会に恵まれる。「子どもを取り巻く環境を良くしていくことで、社会に恩返しをしたい」と志した高校3年生の夏にみらいずworksと出会い、新潟への進学を決意。大学4年間、みらいずworksでインターンや学生スタッフとして活動しながら、地元である岐阜県可児市の地域課題解決型キャリア教育の企画・運営に携わる。現在は、中学生×地元企業を繋ぐ「課題解決型職場体験」のコーディネートや、県内高校の「総合的な探究の時間」カリキュラム設計やプログラム開発、高校と地域の協働体制確立の支援等を担当している。

オハナ
オハナ

私自身保育士資格を持っていることもあって、現在の子どもたちへの教育・環境の変化などにはとても興味があります!事前に拝見したHPにある代表者様の想いにすごく共感したのもあり、お話を聞けるのとっても楽しみにしていました!今日はよろしくお願いします。

角野さん
角野さん

こちらこそ、取材していただけるということで大変嬉しいです!よろしくお願いします。

取材はみらいずworksさんの事務所にて行わせていただきました。アットホームな雰囲気がステキ。

学校教育と社会を繋げることで、明るい未来をつくる

日本における10~39歳の死因順位の1位は自殺。しかしこのような数値が出ているのは主要先進国の中でも日本だけだといいます。また、高校生のうち3人に2人が「将来のことを考えると不安になる」との統計もあり、若者が未来に希望を見いだせないという悲しい状況です。

そんな状況を変え、「ひとりひとりが自分らしく、主体的に生きる社会を実現したい」と思った代表・小見まいこさんが2012年に立ち上げたのがこの「NPO法人みらいずworks」。具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。

オハナ
オハナ

HPを拝見したら、小中高の子どもたちや学校の先生たちに向けて、授業や講演・イベント活動等を行っているようですよね。内容はどのようなものなんですか?

角野さん
角野さん

はい、そうです。
まず、若者が未来に希望を持てない理由の一つに、「学校教育と社会が繋がっていない」ことがあると思うんですね。例えば、学校ではとにかく教わったことを暗記すれば勉強ができると言われていたけど、社会に出たら「やりたいことはなんだ」「言われたことをやるだけじゃなく、自分で考えろ」と言われる。
また、学生時代に大人や仕事に触れる機会がないと、「将来こうなりたいなあ~」という希望も持てないし、そもそも社会にどのような仕事があるのか分からない。そのため、いざ就職という場面になってから自分がどんな仕事をしたいか迷ってしまう。そういうことが起きていると思うんです。

オハナ
オハナ

確かに……。心当たりありまくりです。

角野さん
角野さん

そうですよね!なので私たちは、子どもが自分らしい歩みについて考えたり、社会に出たときのギャップを減らすことができるように、子どものころから色々な大人や仕事に触れられる、そして将来について一緒に考えていけるような環境・機会を作る活動をしています。

このように、誰かが引いたレールに沿って生きるのではなく、自ら自分らしい生き方を模索していけるような力をつける教育のことを、専門用語で「探究的な学び」と言うそう。

みらいずworksさんは、この「探究的な学び」について、学校の授業だけでは学ぶことが難しい専門的な部分を教えたり、学校外の資源と繋いで、「どういう学びを作るのか」というプランニングを一緒にしたりすることを専門領域としているんですって。

具体的には

教育プログラムの開発、普及事業(県内小中学校、高校の生徒へ講師として授業を行う )
人材育成事業(職員、保護者、行政、企業、NPO、地域などへ講師として研修を行う)
情報発信事業(冊子、パンフレットの発行、講演、各種委員としての活動)
ワークショップやイベントの主催、共催

などを行っていると言います。詳しくは公式HPをご覧ください。

オハナ
オハナ

なるほど~。関わる子どもでいうと、小中学校の生徒さんが多いんですか?

角野さん
角野さん

立ち上げ当初はそうだったんですが、最近とある理由で高校生と関わることが増えています。
オハナさん、最近高校生の教育環境が大きく変化しているのをご存じですか?

オハナ
オハナ

ええ!全然分からないです……。といいますと?

角野さん
角野さん

最近文科省が設定する国の教育方針である学習指導要領が改定されて、高校では「探究」という教科が新設されたんです。しかも、ただ国語、数学、英語などの教科に探求の授業が追加されたということではなく、「探究的な学び」を軸にして学校全体の授業を再編する、つまり、国語、数学、英語などの教科での学びも、全て今後の自分の学びに繋げていけ!というような今までの教育を覆すような大規模な改定だったんですよ!

オハナ
オハナ

へ~!今までは「なんで数学とか勉強してるんだろ……。」って思いながら勉強してたけど、これからは「自分は将来○○になりたい。それを実現するためには○○の理由で数学が必要。だから今私は数学を学んでるんだ!」っていう目的意識を自分の中から見出していかなきゃいけないってことですね……?

角野さん
角野さん

そう!そうなんです~!
でもそうなると、数学にしろ英語にしろ、ひとりひとり学ぶ目的が全然変わる。それを自分で編み上げる力を子どもたちに育んでほしいんですね。そして、学校はその支援をしなければいけないんです。

この改定により、文科省の中では学習に対する意識が今までと180度変わったと言えます。ただ、現場の先生からしたら今まで積み上げてきた自分の考えややり方を、根本的なところからガラッと変えなければいけなくなる。そのため、抵抗感や不安を覚える先生も多いそう。

だからこそ、その部分を専門領域としているみらいずworksが探究の授業支援に入る必要があるのだと言います。

子どもがいなくても子どもの教育に関われる、むしろ関わらなければいけない時代

角野さん
角野さん

また、先ほどお話した「探究的な学び」を育てるには、学校外での学びも重要になってきます。学校と、家庭と、地域がみんなで連携しながら子どもに関わっていかないといけない。その協働体制として、今文科省が「コミュニティ・スクール」という制度を全国の学校に広げているんです。

コニュニティー・スクールとは、学校の運営に保護者や地域の人も参画し、みんなで一緒に学びを考えたりそれをどう実現したりするか知恵を出し合って、学校運営に意見を提出できる協議体を設置するという制度のことだそう。新潟市内では、2022年4月から全ての小中学校がこの制度を始めるんですって。

オハナ
オハナ

へ~!全然知らなかった!
その地域の人っていうのは、どういう人を集めるんですか?

角野さん
角野さん

学校の校長先生が、地域教育コーディネーターさんやみらいずworksなどの団体の助言のもと、地域のキーマンに声かけをしていきます。
実は私も、来年ある中学校の委員になることが決まっているんです。セナポンさんにも入ってほしいくらい!

地域教育コーディネーターとは
学校のニーズや地域住民の思いを拾い集めながら、学校と地域を結びつけ、活動に繋げる立場の人。新潟市の場合は、平成19年度から「地域と学校パートナーシップ事業」がはじまり、現在では市立のすべての小・中・高校・特別支援学校に、地域教育コーディネーターが配置されている。

オハナ
オハナ

え~面白そう!なんだか、こんな形で子どもや学校と関われる制度があるんだって思いもしませんでした。子どもの教育へは、自分に子どもがいないと関われないと思っていたので……。でももうそんな時代じゃなくなっていっているんですね。本当にびっくりしています!

角野さん
角野さん

そう、この制度全然知られていないんです!(笑)それが問題で。
おそらく地域の中で素晴らしい活動をされている若い人って今本当にたくさんいますよね。だからまずはこの制度のことを知っていただいて、少しでもやってみたいと思って下さった方には積極的に関わっていっていただきたいです。もちろん、私たちもそういう方と学校を繋げられるように頑張りますっ!

この制度を知って、「私もぜひ学校づくりに携わりたい」と思ってくださった方は、まずはお近くの学校の地域教育コーディネーターさんに、連絡してみることがおすすめとのこと。(詳しくはこちらを参照ください)「地域教育コーディネーターさんが誰だか分からん~!」って人はもちろんみらいずworksにご連絡いただいても大丈夫だそうですよ。

地域の人も巻き込んで一緒になって作っていく学校。学校はもう、子どもと保護者、教員だけのものではなくなってきているんですね。

新潟初の探究塾「探究schoolつくつく」の開講

オハナ
オハナ

そんなみらいずworksさんが、最近力を入れて取り組んでいるプロジェクトがあるんですよね!

角野さん
角野さん

はい!小学生が対象の“本気のお仕事体験ができる塾”探究schoolつくつくです!つくつくに関しては、メインで担当してもらっている塾長のゆきむに説明してもらいますね!

ゆきむさん
ゆきむさん

オハナさんお久しぶりです~!

このモルック記事でもお世話になった新潟モルッククラブ会長であるゆきむさん。みらいずworksさんにもスタッフとして関わっているそう。実は今回のこの取材もゆきむさんからお話いただいたのです。今回はzoomでのご参加でした!

オハナ
オハナ

ゆきむさぁ~ん!モルックぶりです!(笑)
さっそく探究shoolつくつくについて、お話お聞かせ下さい。これはどんなプロジェクトなのですか?

ゆきむさん
ゆきむさん

簡単に言うと、 お仕事体験を通して、自分が学んだことをアウトプットしながらこれからの社会で生きる学力を身につけることができる学習塾です。 このような塾のことを「探究塾」というのですが、今東京などの都心ではかなりブームになっているんですよ。ちなみに、新潟でこの探究塾を開講したのは今回の「探究schoolつくつく」が初になります!

オハナ
オハナ

へ~!全然知らなかった……!

ゆきむさん
ゆきむさん

そうですよね。塾って言うと、英語や数学などの教科の勉強をするところだと思いがちなんですが、このような「探究塾」が今増えているんです~。学校のテストの点数では計れない、「探究心」や「自ら作り出す力」などの力を育むことを目指しているんですよ。

働き方も多様化し、個人の個性が重視されるようになった現代。これ自体は非常にいいことではあるけれども、これから先どのように生きたらいいのか、わかりやすい「正解」はなくなってしまったのかもしれません。

そういった時代を楽しんで生き抜くには、今までのように誰かからあたえられた学びや正解を追い求めるのではなく、自分なりの正解を考え、そのための学びを作り出す力がとても大切だというゆきむさん。そういったスキル(力)の元となるのが「探究心」だと言います。

オハナ
オハナ

いや~本当にその通りだと思います。私は社会に出てからこの「探究心」がすごく大切だと気づきました。楽しく、自分らしく働くこうと思えば選択肢はいくらでもあけれど、逆に自分のやりたいことに気付けなければ与えられた枠に収まるしかない。そこの折り合いをどうつけるか、現代において自分自身の生き方の最適解を模索していく力っていうのは、すんごく育むべき力ですよね……。
具体的にはどんなことをするんですか?

ゆきむさん
ゆきむさん

はい、最初に言ったように「お仕事体験」をするんですが、ただ職業について学ぶだけではなく、その職業に就いている大人と実際に会って一緒に企画や課題を行ったり、フィールドワークをしたりしようと考えています。例えば、作ったものを販売したり、デザインしたものをコンテストに応募したり、企画を商品化したり……。

オハナ
オハナ

面白そう!子どものころって、何かをやればやるほど好きなものも増えると思うから、今から色んなことに触れて、興味がある分野を広げてほしい!また、キラキラした大人たちを見ることで「自分もこうなりたい」と未来に希望を持つことが出来る機会になったらいいですね。

途中、多様性が~とか最適解~とか難しい話もしましたが、お子さんはただ楽しみながら自分のやりたいことを追及したり、成功体験を積むことができる時間になったらいいのかなと思います。

この「探究schoolつくつく」について、本格的にプロジェクトが始動するのは2022年の4月から

4月の頭には無料体験会も行うらしく、内容はこのようになっています。

探究schoolつくつく無料体験会

時間
4月1日(金)17:00-18:00
4月2日(土)11:00-12:00

○場所 上古町の百年長屋 SAN
〒951-8063 新潟県新潟市中央区古町通3−653(https://sun000.base.shop)

○対象:
新小学校1年生~小学校5年生 ※ひらがなが読めるお子様

○参加費
無料

○内容(仮)
4月1日 (金) 家庭でも役立つ!コミュニケーションワークショップ!
4月2日(土)「プロダクトデザイナー」

参加したい!と思った方はこちらの公式HPから詳細をご確認くださいね。

正解のない時代を生き抜くために、大人がするべきこととは?

オハナ
オハナ

最後に、この混沌とした時代の中で自分らしく生き抜く力を育むために、みらいずworksさんは主に子どもたちにアプローチしていると思うんですが、私たち大人はどのようになっていったらいいと思いますか?

角野さん
角野さん

そうですよね……。まずは考えを柔軟に「変化を楽しむ」ことだと思います。
とはいえ、今まで自分が生きてきた中で形成された価値観などを手放せっていう訳ではないんです。これからの時代、どんどん色々な人や考え方が現われて、葛藤したり混沌とした思いを抱えながら生きていくことが多くなると思います。自分の中で何が正しいのか分からなくなるかもしれなう。でも、それはそれでいい。曖昧なものを曖昧なまま受け入れることが出来る体力(=ネガティブ・ケイパビリティ)を付けて、少しずつ、少しずつ考えを変えていける人が増えたらいいなと思います。

みらいずworksさんでは、そんな大人たちに向けのイベントも多数行っているといいます。

今、社会は急激なスピードで変化しています。全ての価値観をアップデートしていくのは難しい。また、自分は出来ていると思っても、実は出来ていないかもしれない。そのことを受け入れて、分かりやすいことに逃げないこと議論ではなく「対話」をすることが大切です。

悩んでいる方はぜひみらいずworksさんのイベントに参加してみてはいかがでしょうか?イベントの開催情報は公式FacebookInstagramで発信されていますので、気になった方はぜひそちらを見てみてくださいね。

まとめ

という訳で今回は、NPO法人みらいずworksの角野仁美さん、ゆきむさんにお話を伺いました。

子どもって、私たちが思っているよりもずっと大人を見ているし、感じたことを吸収します。だから生き生きと働いている人がそばにいたら「自分もこんな風に働いてみたい!」って思うし、そういう人がいなかったら将来に希望が持てなくなる。

子ども時代になるべくたくさんの大人と関わること、色んな生き方を知っておくことって、未来を豊かにするためには本当に重要なことです。 そのような社会を作るために、セナポンとしては改めて、「仕事を楽しむ」「そしてそれを発信する」ことは続けていきたいなと感じました。

角野さん、ゆきむさん、お忙しい中お話を聞かせて下さり誠にありがとうございました~!

写真撮影:小林千裕

お問い合わせ

社名NPO法人みらいずworks
住所〒950-2044
新潟県新潟市西区坂井砂山2-18-2
電話番号025-211-8383
e-mailinfo@miraisworks.jp
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