ヒロインに萌えを感じながら好きな文学作品を紹介してみる

ヒロインに萌えを感じながら好きな文学作品を紹介してみる

2021/5/27
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ヌマ
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かわええ女の子がいるから頑張れる

文学作品をカッコよく読みこなしたい!

いるだけで場を明るくしてくれる人、マルチタスク能力が高い人、どんなスポーツをやらせても上手くこなす人……etc.

こういう人に憧れちゃうな~っていう、いわゆる「理想の人物像」ってのが皆さんにもあるのではないかと思います。

僕が思い描く理想像の一つが、太宰を手に屋上に上がりこの世などはと憂いてみせることができる人。言い換えるならば「文学作品もスラスラ読みこなせる高い読解力と感受性を持った人」です。

だって、難しい本を読んでる人ってなんかカッコいいじゃん。頭よさそうじゃん。一目置いちゃうじゃん。

そういう人に、私はなりたいと思うんだけどさ、やっぱり文学って難しいんよね。中々スラスラと読めるもんではない。だからこそ読めるとカッコいいんだけども。

僕もたまに手を出してはみるものの、貧困な読解力が故に内容がさっぱり理解できず、カフェや電車で開いて周囲を威嚇するだけの道具になってしまっていることが多々あります。

しかし、そんな残念な僕にでも楽しく読めた作品なんてのも勿論あるんですよね。

それはなんでだろうと考えてみると、それぞれの作品に登場する魅力的な女性達の存在があるのではないかという結論に達しました。現代風に言うならヒロイン。しかも各々が確かに萌え要素をもっている。

それに気が付いた瞬間、僕の目にはもう目の前の本がライトノベルとそう変わりないものに見えていましたね。表紙に可愛い女の子のイラストを見たよ。ええ。

まあそれはちょいと盛っちゃいましたが、「こういう目線で見たら難しい文学作品も楽しく読めるのでは」という観点に基づき、3つの作品とそこに登場するヒロインを紹介していきたいと思います。

尾形菊子 ─川端康成『山の音』より

『山の音』 著:川端康成 
新潮文庫版
角川文庫版

菊子の萌えポイント

  • 少女の面影を残すあどけなさ
  • 浮気性の夫を健気に待ついじらしさ

いじらしさと芯の強さを併せ持つ正統派

   もみあげ
菊子の揉上げと額とのあいだの生え際が、実にきれいだった。信吾はそんなところに気づいたことはなかったようだ。そんなところの生え際も、微妙に可憐な線を描いている。

『山の音』 角川文庫 243頁

見上げると、鳩が五六羽庭の上を低くななめに飛んで行った。
菊子も聞いたらしく、廊下の端に出ると、
「私は自由でしょうか」と鳩を見送りながら涙ぐんだ。

『山の音』 角川文庫 322-323頁

『山の音』に登場する菊子は、物語の主人公である尾形信吾の息子、修一に嫁ぐ形で尾形家にやってきました。

20歳そこそこでほっそりとした色白。顔が小さく、肩やあごのラインが美しい可憐な女性です。少しひ弱な所もあり、少女のあどけなさを残したところもあります。

菊子の生え際を描写した一節を上に引用しております。このような表現は文学作品ならではって感じがして好きです。フェティシズムに溢れてるよね。

浮気を繰り返す長男修一、結婚生活が上手くいかず戻ってきた長女房子、菊子の堕胎、修一の浮気相手の妊娠、信吾自身に近づく死の足音……などなど、尾形家のなかは問題でいっぱい。

真綿で締めつけられるような閉塞感とにっちもさっちも行かないようなどん詰まり感。その中にあって、息子の妻である菊子の存在は信吾にとっての安らぎでもあり、菊子もまた献身的に接してくれる信吾を慕います。

読者にとってもまさしく、モヤモヤが続く物語のなかでの光になってくれることでしょう。とにかく不憫なんですよ菊子が。菊子頑張れ! 負けるな! 心を強く持て! と応援しながら読み進めていました。

愛情、嫉妬、親愛で揺れ動きながらもいじらしく生きる菊子。彼女の物語の終わりを、ぜひ見届けてほしいと思います。幸せになってくれ……。

鵙屋琴 ─谷崎潤一郎『春琴抄』より

春琴抄 著:谷崎潤一郎 
新潮文庫版
角川文庫版

春琴の萌えポイント

  • めちゃめちゃプライド高いのにしっかり嫉妬しちゃうとこ
  • 佐助に辛辣にあたりつつも全面的に依存しちゃってるとこ

ツン度98%のドSヒロイン

     うりざねがお
輪郭の整った瓜実顔に、一つ一つ可愛い指で摘まみ上げたような小柄な今にも消えてなくなりそうな柔らかな目鼻がついている。

『春琴抄』 角川文庫 10頁

私は誰の恨みを受けてこのような目に遭うたのか知らぬがほんとうの心を打ち明けるなら今の姿を外の人には見られてもお前にだけは見られとうない

『春琴抄』 角川文庫 77頁

『春琴抄』は鵙屋琴(春琴)という女性と、その弟子である佐助について語る作品です。

とあるお金持ちの家に生まれた春琴は幼少期より「端麗にして高雅」と評される美貌の持ち主で、芸事に対して類まれなる才能を見せました。

大事に大事に甘やかされて育ちましたが、9歳の頃に病気で失明をしてしまい、以降は三味線に己の才気を注ぎ込むことになります。そして出来上がったのが超キツイ性格のワガママお嬢様。

そんな春琴嬢の世話係を任命されたのが丁稚奉公としてやってきていた佐助。2人の関係はいずれ三味線の師匠と弟子といった形に変化していきますが、春琴の指導や応対は苛烈そのもの。佐助はそれを一つの文句もなく受け止め、狂気的なほどの献身を見せる。ここに2人の奇妙な関係が成立しました。

分かりやすくラベリングするなら、佐助は極上のドМで、春琴は純度100%のドS。かつドツンデレ。

佐助が他の女弟子に親切にしているのを見ると黙って稽古をより一層厳しくしたりするところはまあ可愛いもんですが、どう見ても父親は佐助であろう子供を産んだ際も頑として関係を認めず、そのまま養子に出してしまったりもします。

気位の高さが邪魔をして素直に自分の気持ちを外に出せない。完全無欠のツンデレなのです。

そんな春琴だから、物語後半でついに佐助に素直な気持ちを吐露する瞬間が輝くんです。どうしようもなく歪んだ2人を、どうぞ見守ってあげてください。

夜長姫 ─坂口安吾『夜長姫と耳男』より

夜長姫と耳男 著:坂口安吾 
青空文庫(Kindle版)
『桜の森の満開の下』講談社文芸文庫(『夜長姫と耳男』収録)

夜長姫の萌えポイント

  • 少女のように純粋な笑顔
  • 人死にを見てキャッキャと喜ぶ狂気

ヤンデレを超えたサイコデレ

本当に恐ろしいのは、この笑顔だ。この笑顔こそは生きた魔人も怨霊も及びがたい真に恐ろしい唯一の物であろう。

『桜の森の満開の下』講談社文芸文庫 収録『夜長姫と耳男』 347頁

「サヨナラの挨拶をして、それから殺して下さるものよ。私もサヨナラの挨拶をして、胸を突き刺していただいたのに」
ヒメのツブラな瞳はオレに絶えず、笑みかけていた。

『桜の森の満開の下』講談社文芸文庫 収録『夜長姫と耳男』 366頁

『夜長姫と耳男』はそのタイトル通り、長者の娘である夜長姫と職人である耳男のお話。で、問題はこの姫なんですが……まあ率直に言うとやべえんです。

耳男がその耳を切り落れんとされる様を見て無邪気に笑い、蛇の死骸が無数にぶら下がる小屋を見て無邪気に笑い、村の人が死にゆくさまを報告しながら無邪気に笑う……。

夜長姫の頭の中は普通の人間には到底理解できるものではありません。だけどヒメってホントあれなんだ。多分可愛いんだ。幼子のように純粋で裏表のない笑顔が本当に魅力的なんだ。

耳男もまたそんな姫の笑顔に魅入られてしまい、なんとか抗おうと獣を狩って夜長姫の笑顔を見ると身が凍ったようになってしまうんですよね。

病気が流行り、大勢の人が死んでいくのを高台から見て嬉しそうに笑う夜長姫。その笑顔を見て、耳男はついに「この世界が持たない」とまで思うようになり、そして最後の行動を起こすのです。

いつものようににっこりと笑いながら耳男に囁いた姫の言葉は、読者にとっても決して忘れられないものになるでしょう。これはぜひ読んでほしい。

どこまでも狂っていて底抜けに純真な夜長姫……。彼女の笑顔と言葉が胸に刻み込まれ、忘れることができません。ガチ恋勢になってしまった……。

まとめ 可愛いヒロインって良いですよねえ

というわけで以上、3作品から3名のヒロインを紹介させていただきました。

文学作品と聞くとどうにも近寄りがたい、難しいというイメージを持つ人は多いのではないかと思います。まあ実際難しいんですけどね……。

本記事で紹介した作品だと、『山の音』は長編かつ内容がやや難しく、『春琴抄』はその特殊な文体から(通常あるべき句読点がかなり省かれている)、かなり読みにくさを感じる作品になっています。『夜長姫と耳男』は比較的読みやすいかな。

だけど、難しいからこそスラスラ読めるとカッコいいのが文学作品。今回はそれを少しでも身近に感じるべく、ヒロインをクローズアップしてみました。

難しい文章は難しいままに読むのではなく、自分の中で分かりやすく噛み砕いてしまうのが良いです。ある種ステレオタイプ的な属性を登場人物に当てはめ、キャラクター化して考えてしまうと、理解の一歩目への助けになるかも。

ヌマ
菊子担の沼

ああ~、菊子タンかわええんじゃ~。

ヌマ
春琴の下僕沼

春琴様……もっと罵ってください……!

ヌマ
夜長姫沼にハマる沼

夜長姫しか勝たん!

ぐらいのテンションで読んでいってもいいと個人的には思いますよ。作品を読んで何を感じるかはその人の自由ですからね。間違いも正解もないんだ。

文学作品に萌えを感じながら読んだって別にいいんだ。なあそうだろ? 君も推しを見つけよう!

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