
読書好きのユートピア
秘密基地は男のロマンだよね
ドラえもんは押入れで眠ります。
それに影響され、自宅の押し入れに懐中電灯と漫画本、ゲームなどを持ち込んで半日こもったことがあります。自分だけの空間、秘密基地、隠れ家というものに憧れていたんですよね。
子供の頃に感じた押し入れの中のときめき。それを大人になった今再び体験できるような空間が、新潟駅前にありました。
本棚の中で眠るゲストハウス『BOOK INN』
木と本のぬくもりに満ちた館内



ゲストハウス「BOOK INN」は新潟駅万代口を出て左側。ヨドバシカメラを少し過ぎたあたりにある、見慣れた商業ビルの4階にあります。
エレベーターを出ると出迎えてくれるのは木の質感と色合いが暖かい出入口。
宿泊客にはその日の暗証番号が教えられ、それを用いて出入りします。外出は自由。門限はなし。ただし、他のお客さんに迷惑のかからないように。


本棚? いいえ宿泊スペースです。
棚の合間にぽっかり空いた空洞。そこに身体を押し込めると、人一人分のベッドスペースが広がっていました。


中はシングルの布団と脇に多少の余剰スペースがあります。身長171cmの僕が寝っ転がっても座っても余裕は十分。180㎝越えの高身長だと少し窮屈さを感じるかもしれません。
上段は完全な密閉ではありませんが、下段は灯りを付けないと真っ暗。その唯一の灯りもささやかな読書灯一つなので、さほど大きくないスペースの全域を照らすことはできません。
2口のコンセント(うち1つは読書灯にて使用)があり、脇にはハンガーが2つありますが、当然ロングサイズの上着だと尺が足りないので注意ですね。
出入口はカーテンを閉めることで閉ざすことはできますが、扉や鍵などはないので貴重品は自己責任で管理しましょう。
また、他のベッドとの境はただの木の板なので(と言ったら聞こえは悪いかもしれませんが)、防音性はありません。電話や動画などを見たりする際には配慮が必要です。



フロア―内には小さな机やソファなどがあり、24時の消灯時間までは思い思いの場所でくつろぐことができます。
ドリンクスペースにおいてある珈琲や紅茶なども自由。使い終わったコップは自分で洗うのがルールです。
洗面スペース、シャワー等も完備。トイレ含め、それぞれ3~4つほどついているため、多少なら時間が込み合っても大丈夫でしょう。


棚に入っているのはもちろん本物の本。文庫本、ハードカバー、洋書に漫画本もありジャンルは様々。この不揃いさ、ややもすると雑多なところが「本棚」っぽくて落ち着く。
宿泊中はこちらの本を自由に読むことができます。ベッドスペースへの持ち込みも可。巡り合った1冊と共に、静かな夜の時間を過ごしましょう。
孤独な宿泊レポ

到着後、荷物を置いたらまずはぐるりと本棚をひと眺め。当たり前ですが、この世界にはまだ読んだことのない本、めくったことのないページで溢れています。バイブスぶち上がるわ~。
ど・れ・に・し・よ・う・か・なと暫し思案しましたがこういうのは巡り合わせが大事よねと、自分のベッドのすぐそばにあった一冊を手に取りました。
窪美澄さんの『ふがいない僕は空を見た』です。5人の登場人物による軽快な1人称で語られる、現実と自分自身のままならなさ。
良い小説だ。ページをめくる手とセイロンティーをすする口が止まりません。おかげで何度もトイレに立つ羽目になりました。

24時の消灯以降は自分のベッドの中で布団に入りながら続きを読みます。
深夜、人ひとり分の空間。小さな読書灯の光を頼りにページを読み進める。幼少期に過ごした押し入れでのひと時を思い出します。
静かな館内。聞こえてくる木の軋み、人の息遣い、ページをめくる音。
普通なら気になってしまいそうなことですが、この日は全く気になりませんでした。むしろそれがこの雰囲気を構成する一つの大事な要素になっていたと思います。
木の境を隔てた向こう側に、自分と同じく小さな灯りを頼りに読書に興じる人がいる。共に生きる仲間を得たような不思議な感覚。
それがたまらなく嬉しくて、ますます本の世界に没頭することができました。
雰囲気に酔いながら読破。フゥーと息を吐いてそのまま倒れ込み眠りにつきます。良い夜だった。実にいい夜だった。
まとめ 最高の読書空間
というわけで今回は新潟駅前にあるゲストハウス「BOOK INN」さんを紹介しました。読書好きに嬉しいステキ空間でしたね。
狭い寝床、防音性も今一つ。ですが、そのお陰で聞こえてくるささやかな環境音がまた良い影響を与えてくれ、本の世界にのめり込むことができました。
黙々と一人の世界に浸りたい夜にいかがでしょうか。
店舗情報
■BOOK INN
・新潟市中央区弁天3-1-21 菊地第一ビル4F
・駐車場なし
・1泊2,500円~
・チェックイン16:00~22:00 門限なし
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