読書を始めようと思う中学生・高校生にオススメしたい小説をご紹介

読書を始めようと思う中学生・高校生にオススメしたい小説をご紹介

2021/1/21
お役立ち
ヌマ
ヌマ

読書はな、いいもんだぞ

本を読むのってのはエネルギー使うよな

突然ですが、皆さんは年間に何冊の本を読みますか?

若者の活字離れが叫ばれて久しい今日このごろ。1年に1冊も本を読まないという人も珍しくないでしょう。ページをめくって文字を読み、話を理解するという作業は中々どうしてエネルギーが必要なものです。

しかし、読書というものは実に良いことです。純粋に知識を得るという面では、実用書には敵わないかもしれませんが、人間を知るという面においてこれほど役に立つものはない。

論理的思考力を鍛える上でも、現代文の点数を上げるうえでも、定期的に読書をするというのは非常に大事だと僕は思います。あと「趣味は読書!」って言っておけば、土日引きこもってても恰好がつく気がする。

などと偉そうなことをいいつつ、僕は大して読書家という訳ではありませんし、間違っても文学青年ではありません。

難しい本読んでると頭痛くなるし、大学の時に講義で出された課題図書の内容がさっぱり理解できずに深夜の部屋で一人ブチ切れた思い出があります。

というわけで今回は読書慣れしていない人、特に普段そこまでの読書習慣がない中学生や高校生へ向け、読みやすくも面白い(と僕が思っている)小説をご紹介していこうと思います。

読書の世界に足を踏み入れるきっかけにしてくれたら嬉しいですわ。

山田詠美『ぼくは勉強ができない』

あらすじ

時田秀美は高校2年生。勉強はできないがイケメンで人気者で女子にはめっぽうもて、バーで働く年上の彼女もいる。見栄や建前に縛られない彼は、時に周囲の大人やクラスメイトとぶつかり、悩みながらも、彼自身の結論を導き出していく。

初出は1991年。古い小説ですが、今なお青春におけるバイブルの一冊として君臨している名作です。主人公、時田秀美の視点から語られる8つの短編で構成されています。

この秀美君はとにかくイケメンで女子にモテます。年上の彼女もいます。
ド陰キャの僕からすればクソいけすかねえ奴ですが、社会に漂う不文律に縛られない彼の独自の思考や価値観は読者を惹きつけ、考えさせる力があります。だからコイツは人気者なんだよなあ。

秀美君の目から見る日常世界はきっと新鮮で、ハッと気づかされることが多い。僕達がかつて持っていて、そして無くしてしまった「当たり前」を取り戻せるような、そんな気がするんですよね。

物語は軽い一人称口語体で綴られ、一遍一遍の話も短いので、時間の空いた時に気楽に読み進めることができると思いますよ。

〇好きな一節

山野さん、自分のこと、可愛いって思ってるでしょ。自分を好きじゃない人なんている訳ないと思ってるでしょう。でも、それを口に出したら格好悪いから黙ってる。本当はきみ、色々なことを知ってる。物知りだよ。人が自分をどう思うかってことに関してね。

『ぼくは勉強ができない』 166頁より 自分に告白をしてきた山野さんに対しての時田君のセリフ

よくこうもはっきりと言えるよな。

米澤穂信『古典部』シリーズ

あらすじ

「やらなくてもいいことならやらない。やらなければならないことなら手短に」という省エネ主義を掲げる高校生、折木奉太郎は、姉の命令で廃部寸前の古典部に入部させられる。そこで出会った好奇心旺盛なお嬢様、千反田えるに引きずられるように日常に潜む謎を解いていくうちに、33年前の古典部文集に秘められた謎に迫ることとなる。

続いてはシリーズもので「古典部シリーズ」です。第一作目のタイトルは「氷菓」。2012年に京都アニメーションによって映像化されたあの「氷菓」の原作小説です。

廃部寸前の部活に男女4人が集結……という構図は学園青春物の王道ですが、「ビターな青春ミステリ」とも称される本作は必ずしもハッピーエンドで終わらないところも特徴。切なさ、やるせなさ等の「痛み」を伴う青春が描かれます。

古典部部員の中でも僕は特に福部里志という人物が好きです。3作目「クドリャフカの順番」や4作目収録の「手作りチョコレート事件」では、妙郎快活に見える彼が抱える苦悩が描かれます。

歳の割に達観している高校生が多く登場する本作(もちろん福部もその一人)ですが、こうした彼の弱みには非常に共感できる部分がある。

本作はミステリ小説の中でもいわゆる「日常の謎」というジャンルに属しており、人死にやショッキングな現場は登場しません。そういう意味でも読みやすいシリーズです。
僕もこんな部活でえるちゃんみたいな子と楽しく過ごしたい人生だったなあ!

〇好きな一節

高校生活といえば薔薇色だ、だが、その高校生活を途中で打ち切ってしまうほどの強烈な薔薇色は、それでも薔薇色と呼べるだろうか。

『氷菓』185頁より 33年前の出来事を考える灰色の奉太郎

無条件に良いものとされる「青春」について考えさせられます。

朝井リョウ『何者』

あらすじ

拓人、光太郎、瑞月、里香、隆良。5人の大学生は里香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まっている。互いにアドバイスや意見を送り合い、それぞれのSNSで思いを吐き出しながら就活に臨む5人。やがて就活が進み、メンバーの中でも内定を得る者が出始めた時、彼らの発する言葉に隠れていた本音が露わになり、5人の関係性は変化していく。

直木賞受賞作。就職活動を題材にした作品なので、やや対象年齢が高めな気もしますが、中高生のうちに読んでおいたほうが良いような気がした一冊です。僕はこれをまさに就活真っ最中の時に読みましたが、もっと早く手に取っておけば良かったなと思いました。

就活に勤しむ大学生5人が主な登場人物。

物語は基本的に拓人の目線から語られ、読者も拓人と同調して5人を見守ることになります。そのことが、ラストの大きな衝撃に繋がります。本を読んでいるだけの自分そのものを撃ち抜かれたような感覚になりました。

物語において大きな役割を持つのがTwitter。人として発する言葉と、SNSの1アカウントとして発信する言葉って、大抵ズレがありますよね。この二面性とも言うべき特性が、物語のカギとなります。

SNS社会に生きる若者に、ぜひ手に取って欲しい一冊。拓人の語り口は軽快なのでスイスイ読めると思います。就活の本だからといって、くれぐれも就活前に読むことのないよう……。読んでもいいいけどね。

〇好きな一節

自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。

『何者』310頁より 物語の最終盤

このへんのやりとり、刺さった~。

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

あらすじ

田舎町に住む中学生、山田なぎさは「早く大人になりたい」と日々願っていた。そこに転校してきたのは自分を人魚と言い張る海野藻屑という電波系少女。彼女に妙に懐かれ辟易とするなぎさだが、徐々に友情を深めていく。やがてなぎさは藻屑の秘密を知り、彼女が救いのない日常を戦い生き抜いていることを知る。

タイトルは有名&印象的なので、読んでいなくても存在を知っていた人は割と多いのではないでしょうか。
元々がライトノベルだったということもあり、文体は非常に軽い。だけどその分内容は陰鬱で、読むのに多少のエネルギーは必要かなという一冊です。

なぎさが求めているのは社会と闘うための力。平たく言えば「お金」で、作中ではそれを「実弾」と表現されています。

その実弾と対照的に位置づけられているのがタイトルにもある「砂糖菓子の弾丸」です。言うなれば現実逃避のための妄言でしょうか。藻屑はこれをそこらじゅうにまき散らす電波系少女です。

彼女たちが「子ども」であるための無力感をまざまざと突きつけられる様は読んでいて辛く、終始胸を締め付けられました。今まさに子供時代を生き抜いている中高生に読んでみて欲しいなと思います。

〇好きな一節

今日もニュースでは繰り返し、子供が殺されている。どうやら世の中にはそう珍しくないことらしい、とあたしは気づく。生き残った子だけが、大人になる。

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』188頁 山田なぎさの述懐

残酷だけど、それもまた世界の真実ですね。

恩田陸『夜のピクニック』

あらすじ

甲田貴子の通う高校には「歩行祭」という名の伝統行事があり、それは全校生徒が24時間かけて80㎞を歩きぬくというものだった。高校最後となる歩行祭の日に、貴子はとある小さな賭けを持ち込んでいた。それは、クラスメイトである西脇融との間にある、とある因縁に関わるものだった。

「歩行祭」という架空の学校行事を描いた作品。物語ではこのイベントの始まりからぴったり終わるまでが描かれます。400頁と中々の長編ですが、その間登場人物たちはただただ歩いているだけです。

学生時代の合宿とか修学旅行って、凄い特別な時間でしたよね。夕方過ぎて夜になって、寝る直前になっても周りにはクラスメイトがいる。まだ「学校」が続いている。終始続く「非日常感」に胸躍らせました。

貴子と融、またはそれを取り巻くクラスメイト達の小さな思惑が重なり、わずか24時間の間に関係性は大きく変わっていきます。

温かい友情に瑞々しい恋の描写。多彩な言葉で表現される歩行の疲労感。またそれによってむしろクリアになっていく思考……等々、青春のきらめきをリアルに切り抜いた表現が随所に見られ、自分も一緒に歩行祭に参加したかのような気持ちになれる。大人になってからはまた違った味わいのある、傑作青春小説だと思います。

〇好きな一節

だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって公開する日が来ると思う。

『夜のピクニック』189頁より 忍から融へ向けての言葉

全てはタイミングなんだよな。タイミング。

まとめ

本当なら自分の好きな本を読むのが普通に一番いいのですが(映画とかドラマの原作本でも良いですよね)、その内容が難しくて理解できなかったときは嫌になっちゃいますよね。最悪本を読む気なくしてしまう。

というわけで今回は参考までに、いわゆる青春小説のなかから、読みやすい・文体がそれほど重たくない(だろうと思われる)小説を5つ選んで紹介させていただきました。

小説を通して、様々な世界や人間や思想に触れることで、心が豊かになると思います。別に本のレベルの高い低いは関係なく「自分とは違う世界に触れる」ということが大事だと思うんですよね。

だから、ちょっとのスキマ時間に小説を開いてみてはいかがでしょうか? ヒマも潰せて一石二鳥。最高の娯楽だね!